「カメラマンに任せれば大丈夫」と思っていると、撮影後に「何かが違う」という写真が上がってくることがあります。カメラマンは写真の技術者です。ブランドの文脈を知っているのは、あなたです。その橋渡しをするのがディレクションの仕事です。

背景は商品より先に決める

背景の素材と色が、写真全体の印象を決めます。白い背景は清潔感がありますが、無個性にもなります。Tsukino Textileの撮影では、工房で使われている古い木の板を背景に使いました。商品と背景が同じ文脈にあることで、写真に物語が生まれます。背景は撮影当日に決めるのではなく、事前に選んでおくことが重要です。

自然光と人工光の使い分け

自然光は柔らかく、素材の質感を正直に写します。ただし、天候と時間帯に左右されます。人工光は安定していますが、設定を誤ると硬い印象になります。Tsukino Textileの撮影は、松本の工房の北側の窓から入る光を使いました。染色された布の色が、最も正確に再現できる光でした。

小道具は「引き算」で考える

小道具を増やすほど、商品から視線が離れます。「何を置くか」より「何を置かないか」を先に考えてください。Tsukino Textileでは、染色前の白い麻布一枚だけを添えました。それ以上は置きませんでした。余白が、商品の存在感を強くします。

撮影後の使用先を先に決める

ECサイト用、SNS用、印刷物用では、必要なアスペクト比と解像度が異なります。撮影前に使用先を整理しておくと、カメラマンへの指示が明確になり、後から「この写真が使えない」という事態を防げます。Tsukino Textileでは、ECサイトと展示会の印刷物の両方を想定して、縦横両方のカットを撮影しました。

撮影ディレクションは、ブランドの文脈を視覚に翻訳する作業です。まず話を聞かせてください。制作ノートにも関連する記事を書いています。